これから新社会人になるという方もいれば、別の職場から新しい環境に変わるという方もいるでしょう。その中にはこれから営業を仕事としていくという方もいると思います。「これまで営業なんてしたことがないし、セールストークを巧みに繰り広げる自信なんてない……」という方も多いのではないでしょうか。
営業というと知らないお客さんのもとに飛び込んで、口八丁手八丁で商品を売り込み、断られてもあきらめず……なんてイメージを持っている方も多いですよね。「営業にマニュアルなんてない!営業は口の上手さと根性だ!」なんて言われていたこともありました。しかし、これまでまったく営業の経験がなくても営業の仕事ができるよう、営業のマニュアルってちゃんと作られているんです!
そこで今回は、初めて営業をする方でも安心して仕事ができるよう、営業のマニュアルの大切さや手順についてお伝えしていきます。この営業のマニュアルを参考にして、少しでも営業という仕事に対する不安をやわらげていきましょう。
そもそも営業とはどんなものなのか?
営業のマニュアルについて、「そもそも営業という仕事は何をすることが目的なのか」を考えてみました。
- お客さんの不安や悩みを解決する
- お客さんの理想や希望をかなえる
- お客さんから喜ばれ、感謝されるために商品を提供する
ノルマに追われて知らない人の元へ行き、断られても断られてもしつこくまとわりつく、なんてことではありません。あくまで自分たちの商品を提供することで、お客さんに喜んでもらったうえで売り上げを上げることが営業の目的なんです!
そのために「自分たちの商品を売る!」ということからではなく、「自分たちの商品を必要としている人を探す」ことから始めましょう。ただやみくもに知らない人のもとへ飛び込んだところで、お客さんは警戒心を強めて、心を開いてくれることはありません。話さえ聞いてくれないでしょう。
営業の仕事は、次のように進めていくことがお勧めです。
- 目の前のお客さんは、どんな悩みを持っているのか
- 悩みを解決するために、どんな方法があるのか
- 悩みを解決するために、自分たちの商品がお役に立てないか
まずはお客さんとの信頼関係を築いていくことから始めていくのです。売り上げを上げるのは、その延長上にあると思っていいでしょう。
営業マニュアルその1 営業として考えておいた方がよいこと
営業マニュアルその1は「あらかじめ準備しておくこと!」いざ営業に出る前に、頭に入れておいた方がいいことです。
- 売りたい商品が、お客さんにとってどんなメリットがあるのか
- 売りたい商品が、お客さんにとってどんなデメリットになっているか
- 商品に興味を持ってくれそうなお客さんか
- 10人のうち3人は話さえ聞いてもらえないと思っておく
- 断りの言葉として多い言葉を押さえておこう
商品を売り込む時は、当然ながら自分たちの商品のことを知っておく必要があります。いろいろなお客さんの質問や反応を想定し、どのような返答を返すのかシミュレートしておきましょう。ぶっつけ本番ではなかなか思ったような言葉は出てこないものです。
飛び込みで営業をする場合、最初から話を聞くつもりがない、あるいはよほど機嫌がよい時だけ聞く、というお客さんはだいたい3割ほどという統計が出ています。つまり10人のうち3人は、断られる以前に話さえも聞いてもらえないということ。誰だって断られたり、冷たくあしらわれたりするのは嫌なものですが、10人のうち3人は誰だってそうだと思えば、気が楽になりますよね!
明らかに話を聞いてくれなさそうな態度を取られた場合は、深追いは禁物です。しかし「金額が高い」「今は話を聞いている時間がない」「考えておく」といったワードが出た場合は、返答次第でお客さんの興味を引くことができる可能性もあります。スパッと見切るのか、もう少し食い下がってみるのかを判断するためにも、断りの言葉として多いフレーズをリストアップしておくのはおすすめです!
営業マニュアルその2 訪問先の情報と訪問先の地図をまとめておこう
営業マニュアルその2は「お客さんについての情報をまとめること」。飛び込み営業の場合、もちろん初めての相手ですよね。そのお客さんがどのような方だったのか、きちんと記録しておきましょう。
- 訪問した日時
- どのような反応だったか
- どのような悩み、希望を持っているか
- お客さん以外に、悩みや希望を持っている方はいるか
- 次回も訪問してみようという場合は、いつ訪問する予定なのか
続けて、訪問したお客さんの会社または自宅を地図に書き入れておきます。これをもとに次回訪問する時に効率の良いルートを決めておくというわけです。この時に「すでに契約済み」「見込みが高い」「別のお客さんを紹介してくれた」というように分けておくと、優先順位も把握できていいですよね!
すでに契約を取ったお客さんのもとへも、ちょくちょく顔を出しておきましょう。アフターケアという目的もありますが、お客さんとの信頼関係を築いておくことで、また別の商談につながったり、別のお客さんを紹介してくれたり、あるいはお客さんが励ましてくれたりなんてこともあるかもしれません。
続いては、自分の成果を客観的に見て自信をつけるためのマニュアルをお伝えします。
営業マニュアルその3 自分の実績を数字として把握しておこう
営業マニュアルその3は「これまでの自分の実績を、数字化しておくこと」。営業は結果が出なかったり、冷たくあしらわれたりすると自信をなくしてしまいがちですよね。しかし実際に自分の実績を数字にしてみると、実はそれほどヒドい結果ではなかったというケースも出てくるはずです。
数字化しておきたいのは、次のような項目です。
- 1日あたりの訪問件数
- お客さんと対面までこぎつけた回数と確率
- お客さんと商談までこぎつけた回数と確率
- お客さんと契約までこぎつけた回数と確率
- お客さんから別のお客さんを紹介してもらった回数
- これまでの売り上げの総額
話すらできずに終わるのは10人のうち3人という統計はすでに紹介しましたが、つまり対面までこぎつけた確率が70%以上であれば、営業としてじゅうぶん自信をもってよいというわけです。これ以外のデータも数字で客観的にまとめてみましょう。
営業マニュアルその4 いざお客さんの前に出た時のために
営業マニュアルその4は「実際にお客さんの前に出た時に注意すべきこと」。お客さんとの対話の中で気を付けたいことを、ひとつひとつチェックしていきましょう。
- 人間関係の構築:まずはお客さんに心を許してもらうことから
- ヒアリング:お客さんの悩みや不安を知り、解決していくために質問をする
- アプローチ:商品が必要である、欲しいと思ってもらう
- クロージング:お客さんから「お願いしたい」と言ってもらえるのが理想
- フォロー:契約成立後のフォローは、他のお客さんの紹介やリピートにつながる
まず人間関係の構築ですが、お客さんが警戒しているままでは、話を聞いてもらうことすらできません。まずはお客さんの心を開くところから始めましょう。そのために重要なのは、やはり第一印象です。人間関係の90%は第一印象で決まるといっても過言ではありません!「身だしなみを整える」「明るくハキハキと話す」の2つを常に忘れないようにしましょう。
いきなり商品の提案をしたり、商品に誘導するような話では、お客さんをさらに警戒させてしまいます。最初は「困っていることとかないですよね?」といった軽い質問から。少し話せるようになったら、雑談を織り交ぜてもいいでしょう。ヒアリングの最大の目的は人間関係を構築し、お客さんの方から悩みや不安を話してもらうこと。はい、いいえで答えてもらう「クローズドクエスチョン」と、自由に回答してもらう「オープンクエスチョン」を織り交ぜながら、お客さんと話してみてください。
ヒアリングも営業にとって重要な項目です。お客さんとの商談に入ったら、まず一言「気になることがあったら、その場で気軽にご質問ください」と添えておきます。また商品の説明の時間も、手短にすませましょう。お客さんの側も長々とした話を聞かされるより、要点をわかりやすく、短く伝えられた方が効率的で嬉しいはずですよね。そのかわりに、お客さんの質問に答えることに多く時間を割きましょう。いきなり「質問はありませんか」と言われても困ってしまいますから、「どうしてこんなことが可能なのか、その理由について疑問をもたれませんか?」など、お客さんの質問を導き出すような問いかけをこちらからしていくのも手です。
クロージングとは、お客さんと契約を結ぶ段階のこと。しかしまだ契約が完了したわけではありません。「検討しておきます」と言われてそれっきりになってしまった、なんてこともありますよね。クロージングの時に役立つ方法として、次のようなものがあります。
- 段階ごとに合意を得ながら商談を進めていく(テストクロージング)
- お客さんに考えたうえで結論を出してもらう(サイレントクロージング)
- 金額やプランの異なる複数の選択肢を提示する
- すぐに契約するメリット、時間をかけるデメリットを提示する
商談の進み具合やお客さんの反応にあわせて、使い分けてみてください。また契約が成立したお客さんに対して、今後も関係をつなぎ続けることも忘れてはいけません。お客さんに対するフォローにもなりますし、信頼関係が強くなれば追加の契約や、他のお客さんの紹介につながることもあります。
自分なりの営業マニュアルを作っておくことは非常に役立つ!
さて、営業のマニュアルとして、営業に入る前に準備しておきたいことや心構え、営業をする時に役立つ知識などをお伝えしてきました。
- 営業とは、お客さんの不安や悩みを解決し、望みをかなえて感謝されるために商品を提供する仕事である
- 営業を行う前に、自分たちの商品の情報や、想定されるケースのシミュレーションをしておこう
- 訪問したお客さんの情報をまとめ、地図を作っておくことで今後の営業を効率よく行うことができる
- これまで自分が行ってきた営業のさまざまなデータを数字化し、さまざまなデータと比べてみるとよい
- 営業はお客さんとの信頼関係を構築することで、成果を飛躍的に上昇させることができる
かつては「営業は失敗して当然、数撃ちゃ当たる」「しつこく食らいついて意地でも商品を売ってこい」といった精神論、根性論もありましたが、今は営業もマニュアルが作られ、きちんとしたやり方を教えてくれています。
ただ商品を売りたいというだけで、お客さんは商品を買ってはくれません。お客さんと話をし、信頼関係を構築できるよう頑張ってください。