営業活動をスムーズに成約に結びつけるためには、知識や交渉力、プレゼンなどさまざまな能力が必要ですが、実は営業でもっとも大切なのは「第一印象」だといわれています。
でもお客さんの記憶にしっかり残り、誰からもあの人は素晴らしい営業だと言われるようになるためにはどうすればいいのか、悩む場合もありますよね。
最初のころは、新人で知識やプレゼン能力がなくても勢いで売ることができますが、やはり「できる営業マン」になるためには意識して第一印象がよくなるように自分を磨かなければなりません。
実は、ちょっとした心得を知っているだけで人の印象にしっかり残ることはできるのです。心理学を応用したテクニックで、営業だけでなく、日常でも使えますのでぜひチェックしてみましょう!
そこで今回は、「第一印象に残る人になるための工夫」についてお伝えしていきます。
第一印象に残りやすい、「声」や「見た目」に気を付けよう
まず、第一印象はどうやって決まるのかお伝えしましょう。心理学者のアルバート・メラビアンが唱えた「メラビアンの法則」という説には、営業にかかわる大事な部分があります。
この「メラビアンの法則」で注目したいところは、人の第一印象を決めるときに何の要素が大きいか、ということです。では実際に、営業業務でよくあるテレアポや飛び込みの訪問をこの法則に当てはめてみましょう。
→言語情報(7%)+聴覚情報(38%)の要素が当てはまる。視覚情報はない。
このように数字で見てみると、第一印象において、「視覚情報」のないテレアポ営業なら「言語情報」より「聴覚情報」の比率が高いので、耳から入る情報がはるかに重要だということがわかりますよね。
つまり、このようなテレアポ営業の場合はもちろん、営業トークをするときにはどんなときでも、聴覚情報(声の質・速さ・大きさ・口調)が重要で、相手にとって心地良いと感じる話し方で話して、初めて「営業のときに印象に残る」ということですよね。
→言語情報(7%)+聴覚情報(38%)+視覚情報(55%)の3つの要素が当てはまる。
そして訪問営業の場合、第一印象に最も残るのは「視覚情報」(見た目・表情・しぐさ・視線)だということがわかります。
このテレアポと訪問営業の2つの例にあてはめてみてわかるように、商品知識がいくらあっても、この「聴覚情報」「言語情報」を重視していない人は、お客さまの印象には残りません。したがって、この場合は「話し方」「見た目」の両面に気を配るようにしましょう。
話すときは、最初と最後に気を付けよう
しかし第一印象は良かった、だけでその後の営業がうまくいくかといえば、案外そうでもなかったなと思う人もいますよね。身なりも清潔にし、颯爽として声も明るくハキハキ話したのに、なぜかうまくいかなかった…。そんな人には何が足りないかを考えてみましょう。
残るのは7%の「言語情報」です。第一印象の見た目に加えてさらに営業で「印象に残る」ためには比率は少ないとはいっても、「言語情報」にも注意を払う必要がありそうです。
でもこの「言語情報」というのは単なる商品知識のことではありません。人と接するときのテクニックになりますので、それを具体的にお伝えしましょう。
1 営業マンは最初の言葉で「印象に残る」
ポーランドの心理学者ソロモン・アッシュが唱えた「初頭効果」という理論があります。これは簡単に言えば、「話をする場合に最初に良い形容詞を並べて、最後にあまりよくない形容詞を並べる」ほうが好印象に受け取られるという理論で、最初に良い言葉を並べておくほうが「印象がアップする!」というわけです。
そうではなくて、最初に相手の人物や会社の規模、応対の良さなどをほめた後に「今日は御社にとってお得になる情報を持ってきました」と言われれば、一応聞くだけでも聞いてみようかとなりますよね。つまり、まず「最初に良い印象を持たせる」ことがとても重要です。
2 人は最後の情報によっても印象が左右される
今度は、アメリカの心理学者ノーマン・H・アンダーソンの「新近効果」について考えてみましょう。(親近感に似ていますが、ご注意!字も意味も違います!)
先ほどの「初頭効果」とは違いますが、アンダーソンが行った模擬裁判の実験では、最後の証言をした方に有利な結論を下したという結果が出ています。この実験を説明すると、模擬裁判を行い、陪審員の判決に証言の順番がどう影響するのかを試すといった内容でした。
つまり「新近効果」とは、「人は複数の違う情報をもらったときに、最後の情報の影響を受けやすい」という効果理論なのです。結論は意外と単純ですよね。つまりは、せっかく良い印象を与えたとしても、別れ際の話を適当にしてしまったら、そこまでのトークの苦労が水の泡になるよということです。ですから営業では「最後に一言印象に残る言葉を言う」のが理想的です。
余談になりますが、訪問営業してせっかくお客さんに良い印象を持っていただいたのに、再訪問までに日が空いてしまった場合は、注意しましょう。なぜならこの「新近効果」のために、後から来たライバル会社の製品のほうが、お客さんには魅力的に映ってしまう・・・ということになりかねないからです。
3 一番印象に残したい部分はコントロールできる
最後に、アメリカの心理学者ダニエル・カーネマンの提唱した「ピークエンドの法則」について考えてみましょう。先程の「新近効果」と少し通じるところがありますが、この法則によると人はほとんどの経験をピーク(一番感情が高ぶった瞬間)とエンド(最後の印象)によって判断するとされています。
もしあなたが映画を見た場合、印象に残る場所は、初めの方や終わりの方などさまざまですよね。その中でも、もっとも印象に残った部分しか、鮮明には覚えていないはずです。
この話を営業にあてはめてみれば、営業トークの「ピーク」をどこにするかもよく考えておく必要があります。そうすることで、「自分が相手にもっとも印象に残したいところ」を意図的にお客さまに残せるようにコントロールできるからです。
もっとも伝えたい部分をピークにもってきて、最後の一押しにエンドを置くようにするのがポイントです。
商品よりも、あなた自身を印象に残そう
たとえば、あなたがお客さまの宴会場で一芸を披露しておもしろかったら、きっとあなたはいつまでもお客さまの印象に残りますよね。もちろん決して一芸をおすすめしているわけではありませんが、あなたの得意なことや、お客さまの思い浮かべやすいことなど、商品よりも「あなたを印象に残す」ことに努力するようにしましょう。
なぜなら商品であれば、他社の優れたものがあれば相手の印象からは消えてしまいます。でも、あなたの個性は他にはないものなので、相手の印象からは消えないからです。
せっかくここまで努力したのでしたら、一回だけの売り切りではなくリピーターとしてもつなげていくことを考えてみましょう。その場だけではなく「相手の印象にいつまでも残る」ことはとても大切なことです。
つまり、営業する場合も姿勢は同じで、商品を買っていただいたお客さまが困っていることをよく聞いてみましょう。その際にはあなたの売り込みたいものは忘れて話しを聞いてあげてください。その話は、うまくあなたの売りたいものとマッチしないかもしれません。
なぜならお客さんの悩みが解決したら、きっと営業マンのあなたに対する相手の印象はより強くなっているからです。次にお客さまが買いたいと思ったときには、あなたのことを思い出して声をかけてくれるに違いありません!
まとめ
これまで、営業には第一印象、とくに、その印象の与えかたが大事だということをお伝えしてきました。
まず商品の説明を重要視するより、まず先に目や耳から入ってくる情報の方が重要であって、商品説明はその後ということが営業活動をする上で大事なポイントです。
そして印象の与え方としては「初頭効果」「新近効果」「ピーク・エンド」などの心理効果をうまく活用していけば、よりよい印象を持ってもらうことができます。営業は多かれ少なかれその人の印象に左右されるので、結局は、営業のみな皆さんの人柄で売れていくものなのです。
「次もあの人に頼みたい」と思ってもらい、リピーターとなってもらえる人を増やせば営業ももっとうまくいきます。
そうやって営業するときによい印象を持ってもらうことがうまくできるようになれば、あなたは自分が人として成長していると感じることができるはずです。