リーダーという立場は、望んでもなれないこともあれば、望んでもいないのに強制的になってしまうこともありますよね。でも、これまでの人生で、あきらかに「こいつはリーダー向きだな」って分かる人もいたのではないだろうか。
リーダーっぽい人はなんとなくわかるけど、自分がリーダーに向いているかわからないという人はとても多いようです。そんなリーダーの適性というのは、本人にとっても周囲にとってもなかなかわからない、掴みどころのない能力です。
しかしそんな掴みどころないように見えても、実は共通するポイントがあるのです!そこで今回は、リーダーの適性としてどんなものがあるか、お伝えします。自分がいくつ当てはまるかチェックしてみるのもよし、自分の上司をこっそりチェックしてみるのも面白いかもしれません!
部下の話を傾聴できる
まずリーダーとして最も重要な適性の一つが、「部下の話を傾聴できる」という能力です。人の話を聞く、というのは誰にでもできますが、人の話を傾聴することができる人はほとんどいないといっていいほど貴重な能力でしょう。しかし気をつければ誰にでもできることでもあります。
「話を聞く」と「傾聴する」の違いを簡単に定義するなら、傾聴は「聞くことに集中」し、「口を挟まない」ことです。リーダーが傾聴することには2つの利点があるといわれています。
まず、一つ目の利点は正確な情報を得られるということです。リーダーと部下はもともと対等ではありません。そのリーダーに、「それは違うんじゃないか?」などと言われると、部下は話を取り繕ったり、リーダーに話を合わせたりしてしまいます。
二つ目の利点は、部下の心をつかめるということです。忙しい現代においては、ゆっくり話を聞くことは大変ですよね。逆にいえば、話をゆっくり聞いてもらう機会は希少です。だからこそ、自分の意見を最後まで言わせてもらえた部下はリーダーを信頼でき、リーダーの話を聞けるのです。
リーダーにしっかり話を聞いてもらえないのに、指示だけされても……嫌ですよね!部下が不満を持っていても、話を聞いてくれないリーダーでは不満を伝えることもできません。だからこそ、リーダーにはこの「傾聴するできる能力」が必要なのです。
部下をきちんと評価できる
先程触れたように、リーダーが部下の話を傾聴できると、もうひとつの能力が生きてきます。それは「部下をきちんと評価できる」能力です。これは多くの部下が心から望んでいるリーダー適性といえるでしょう。
どんな人でもそうですが、自分の仕事や能力はきちんと公平に評価してもらいたいもの。でも、過大評価してしまうと人は気が緩み、過小評価すると人はやる気を失い、不公正な評価はチーム全体の士気に影響します。
人を評価するときに大事なのも、まずは傾聴です。部下からの報告や連絡が望ましくなくても、叱責などせずにまずはきちんと聞くことで、なるべく正確な情報を取得できます。
つまり、発言だけでなく実際の行動を確認したうえで評価することにより公正さが生まれるのです。このときに大事なのが、評価基準を明確にし、個人ごとに評価するだけでなく功績ごとに評価することが重要になります。
でも、部下の立場になってみれば、以前の評価を引きずらないことで、失敗した部下は「今度こそ」と奮起し、成功した部下も「次も頑張ろう(手は抜けない)」と感じるわけです。きちんとした評価能力は、リーダーの必須適性であり、リーダーの仕事の本質と言えます。
確信を持って正しい目標に進むことができる
つぎに、リーダーに必要とされる素質は「確信を持って目標に進むことができる」能力です。これは多くの人がリーダーという言葉に抱くイメージですよね。
ただし、単純な猪突猛進タイプではせっかくパワーがあっても宝の持ち腐れです。リーダーに必要な適性は、目標に向かうパワーとともに、正しい方向にチームで進む能力になります。チームのメンバーの意思を取りまとめて、同じ方向に向くマネジメント力と言い換えることもできます。
一流の人たちと付き合える、付き合いがある
ところで、どんな分野にも一流とよばれる人たちがいます。いい仕事をしたければ、その分野における一流の人たちとの交流は欠かせません。
一流とよばれる人たちは、もちろん付き合いやすい人もいるでしょうが、中には癖が強かったり、付き合う相手を厳選してくる人も多いのです。こういった人たちとうまく付き合っていく能力が、リーダーには必要とされます。
そのためには、立ち振る舞いや身だしなみなど表面的なことだけでなく、一種の人生哲学や教養を要求されたり、人脈が必要になることもあります。
こういった能力は一朝一夕では養えません。しかし、同時に一流の人たちとの交流こそが、一流の人たちとのよりよい関係を築く一番の経験値でもあります。普段から積極的に人と交流しようと姿勢できることも、リーダーとして必要とされる素質だといいえます。
一人では戦えないことを知っている
もちろんリーダーが優秀であるにこしたことはありませんが、所詮は一人の人間です。優秀なリーダーが一人で仕事をするよりも、チームを率いて仕事をすることでより大きな仕事ができます。当たり前のようですが、このことをきちんと自覚していないリーダーも多いのです。
優秀な部下、あるいは意欲のある部下は、リーダーに仕事を任せて欲しいでしょう。よいリーダーは、上手く部下に仕事をさせるのが仕事です。時には助けの手を引っ込めるのもリーダーの適性の一つといえます。
バランス感覚が優れている
仕事をこなす上で、難しい決断を迫られることもあります。仕事の上での決断は、白黒つけられる単純なものばかりではなく、ときにはいくつもの要素を加味して複雑な判断を必要とされますよね。
そのように何らかの決断をするとき、リーダーに求められる適性は、「バランス感覚が優れていること」です。仕事における決断では、大きく分けて「理念」とか「美学」などの観念的な条件と、「利益」とか「支出」等といった実利的な条件がしばしば対立します。
仕事において、どちらがよいとか、どちらが不要だとかいう話ではなく、どちらも大事で捨てることはできません。より良い決断のためには、リーダーのバランス感覚が問われるわけです。
組織を正しく運営できる
リーダーの適性として色々な能力をご紹介しましたが、究極的には「組織を正しく運営できる」ということにつきるといえます。この能力はあまりに広範すぎて気が遠くなりそうですよね。
実は、組織を運営するにあたってのルールは2000年以上も前の中国最初の統一王朝を生み出した秦の始皇帝の時代に考えられ、「韓非子」という書物に記されているのです。
「古すぎて現代に当てはまらないのでは」と思うかもしれませんが、この書は数々の組織のリーダーに愛され、アメリカの巨大企業のトップもこっそりと愛読していると言われています。その中から組織を上手く運営する7つのルールとされているものをご紹介します。尚、わかりやすいように語句を現代の経済用語に置き換えています。
第二、損得よりも善悪を大事にすること。法を犯して儲けると破滅する。
第三、採用やリストラは規則に従うこと。人物の好き嫌いなどで行ってはいけない。
第四、仕事の割り振りは仕事能力や判断力で決めるべきである。人物の好き嫌いなどで行ってはいけない。
第五、賢さや愚かさで評価することはあっても、人格攻撃(モラハラ)してはならない。
第六、客観的な基準で評価し、当て推量してはならない。
第七、誠実さを持ち、仕事において嘘をついてはならない。
とても2000年以上前のルールとは思えないほど先進的で合理的ですね。すべてきちんとやるのは難しいですが、こういう基礎基本的なルールを徹底できることがリーダーに必要とされることなのです。
まとめ
さて、今回はリーダーの適性について7つご紹介しました。
まず、リーダーの適性として、部下の話を傾聴できる能力が重要です。傾聴することで、部下との関係を素晴らしいものにすることができ、正しい情報を得ることにつながります。
次に、部下をきちんと評価できる能力が大切です。適切な評価は部下の仕事ぶりに大きく影響します。
また、確信を持って正しい目標に進むことができる能力も重要です。典型的なリーダー像ですが、「正しい目標」を忘れてはいけません。
さらに、一流の人たちと付き合いがある、付き合える能力も必要となります。一定以上の仕事をしたいのであれば、是非身につけたい能力です。
そして、一人では戦えないことを知っているということも大切です。優秀なリーダーほどこのことを忘れがちですが、常に胸に留めておいて損はありません。
また、バランス感覚が優れている点も重要なリーダーの適性といえます。難しい決断でこそ、リーダーの出番です。
最後に、組織を正しく運営するためにルールの徹底が大切です。組織の運営において、重要なルールをきちんと徹底できるかどうかは、組織の反映の鍵となります。
最後に、もしも読者のみなさんがリーダーになる予定、またはリーダーになっておられるのでしたら、松下幸之助氏の80歳のときの言葉をお伝えします。曰く、「わしは才将、賢将ではなく、徳将になりたい」。
徳将とは、仕事の上では部下のほうが優秀でありながら、その部下たちがリーダーを盛り立ててくれるようなリーダー像をいいます。経営の神様といわれる松下氏でも、人生の大半を過ごして未だ、リーダーとしての高みを目指していたのです。
リーダーに必要とされる適性を知ることは、リーダーを目指している人や現在リーダーになっている人はもちろん、組織に携わる人なら誰にとっても役立つことばかりです。できるところから試してみると、これまでより能力が発揮できるようになりますよね!